コーヒー

Deadstock Coffee の Chop Coffee でのポップアップ・イベントのこと by Takeshi Okuno

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11月29日(木)、30日(金)にアメリカ・ポートランドの Deadstock Coffee が、原宿の Chop Coffee Cat Street でポップアップ・イベントを開催した。

この2つのお店はともに、今年4月に開催された Tokyo Coffee Festival に出店していた。出店している時は自分たちのブースのことで手一杯でなかなか他のブースを見てまわる余裕がないものだけど、わりと近い斜め向かい同士の出店だったので、Chop Coffee のオーナー、パイクさんは Deadstock のイアンたちがどんな感じでやっているかをちらっと見ていたという。

Deadstock Coffee はナイキでシューズの開発に携わっていたイアン・ウィリアムズが、スニーカー好きやコーヒー好きが気軽に集まれるような場所をつくりたくてオープン。ポートランドで唯一の、スニーカーをテーマにしたコーヒーショップだ。

僕はイアンが自分たちのお店をオープンする前にまず、ストリートファッションのショップ Compound Gallery の店内でコーヒースタンドを始めた頃に会っていた。

一方、Chop Coffee を運営しているのは、デザイン会社 パイクデザインオフィスで、ファッションブランドの広告や、雑誌のエディトリアルデザインなどを手がけている。

パイクデザインオフィスでは、以前フットサルを一緒にやっていたデザイナーの榎本君が働いていることもあって、今回の件でも声を掛けやすかった。

イアンは単に Deadstock のコーヒー豆でゲストバリスタを務めるというだけでなく、店内での展示用に Deadstock と自身のヒストリーを表すスニーカーコレクションの一部やグッズ、本なども持ってきてくれた。

コーヒー豆と展示についてのイアンの説明の英文を僕が翻訳して、Chop Coffee のマネージャーの田屋さんとパイクさんに送ったのは前日夜〜当日午前だったけど、さすがデザインオフィスで、すぐにかっこいいメニューを作ってくれて、写真と説明文はパネルにして印刷してくれた。時間的に余裕がない中でも、こういう細かい部分でクオリティ高く作ってもらえるのは、ありがたい。

事前の打ち合わせをしていた火曜日に、東京で月曜日にライブがあったイアンの友人のラッパー OddiseeBIG YUKI さんも Chop Coffee に寄ってくれたところから、すでに前々夜祭的に盛り上がりが始まっていた。

Deadstock はポートランドの、Chop Coffee は東京・原宿のカルチャーとコーヒーをブレンドしているショップなので、一緒にイベントをやったら面白いだろうなと思っていた。

実際に始まってみるとそれ以上に、イアンと Chop Coffee のバリスタさんたちのキャラクター、それから来ているお客さんたちによって、よりイベントが楽しいものになった。Chop Coffee と交流のある近隣〜東京近郊のコーヒーショップの人たちや、イアンが仲の良いコーヒーショップの人たちも来てくれた。

イアンがそこにいて Chop Coffee のバリスタさんたちと連係し、展示とイアン作成のプレイリストによる音楽があると、2日間、まさに Chop Coffee の店内が Deadstock Coffee になっていた。

イアンがまた次回、来年の春とかに日本に来る時が楽しみ、というのと、逆に今度 Deadstock Coffee でも何かイベントができたらいいなと思った。

11/29(木)、30(金)Deadstock Coffee Pop-up at Chop Coffee Cat Street by Takeshi Okuno

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アメリカ・オレゴン州ポートランドの Deadstock Coffee が、11/29(木)、30(金) 2〜5pm に、原宿の Chop Coffee Cat street でポップアップイベントをします。

オーナーバリスタの Ian Williams がゲストバリスタを務め、コーヒー豆やキャップなども販売。
店内には、Deadstock Coffee と Ian のヒストリーを表すスニーカーなども展示予定です。

ポートランドと原宿のコーヒー・カルチャーが交差する2日間、平日の午後ですけど、コーヒー飲みに遊びに来てください。
ともに今年の春に Tokyo Coffee Festival に出店していたお店です。

11/13(火)Coava Coffee ゲストバリスタ @ THE LOCAL by Takeshi Okuno

ポートランドの Coava Coffee が 11/13(火) 6〜9pm に、渋谷・青山通りのコーヒースタンド THE LOCAL でゲストバリスタをします。

Coava が追求するクオリティと味の複雑さやバランスが感じられる一杯を、ぜひ飲んでみてください。
創業者の Matt Higgins さんと、オペレーション部長の Jon Felix-Lund さんが来ます。

THE LOCAL
東京都渋谷区渋谷 2-10-15

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“「全米で最も住みたい街」ポートランドより、コーヒーショップに見る「働き方」考” 〜『We Work HERE』より by Takeshi Okuno

2016年に発売された書籍『We Work HERE 東京のあたらしい働き方 100』で、表題の文章を書きました。スペースの関係で、本の中では短縮版での掲載となったので、もともとの文章を下記にアップします。

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都市計画の成功事例、また美食の街やクラフトビールのメッカなどとして、日本でも近年注目を集めているアメリカ・オレゴン州ポートランド。「全米で最も住みたい街」ランキングで上位に挙がるこの場所は、仕事や生活コストとのバランスを含めて自分が望む生活の質を実現できる、あるいは目指している人たちが多く住むところだと言える。

ポートランドで出会った主には20代半ば〜30代の人たちの働き方については、ローカル・インディペンデント志向、街・コミュニティのコンパクトさの好影響、2つ以上の仕事をする人も、といったことが印象的だ。こうした特徴は、ポートランドを代表するカルチャーのひとつであるコーヒーショップで働く人や集う人の仕事にも見てとれる。

スターバックスや Peet’s Coffee など他の都市からやってきたチェーン店もあるが、より支持されているのは、Coava、Heart、Courier、Barista などをはじめとした地元のロースターやコーヒーショップだ。”Eat Local. Shop Local” というようなキャッチコピーもスーパーなどの店先で日常的に目にするし、地元でつくられた商品や食べ物を積極的に選ぶ人が多い。

ローカル志向は、クラフト志向ともつながっている。品質や製造工程、環境への影響などに配慮してていねいに作られた質の高い商品には、相応の金額を払うという買う側の文化が根付いていることも、地元のメイカーや生産者たちを支えている。

2015年秋に東京でのポートランドフェスティバルで来日した Extracto Coffee Roasters のオーナー、クリス・ブラディ(Chris Brady)は「ポートランドでは、自分のやっていることが大好きで、その分野の手仕事の達人になった人をたくさん知っているよ。食、ビール、コーヒー、肉屋、ガーデニング、カスタムメイドの製品とか、みんなそれぞれの仕事に情熱を持っていて、最高のものを目指しているんだ」と語る。

2015年秋、東京でのポートランド・フェスティバルで来日した Extracto Coffee の Chris

2015年秋、東京でのポートランド・フェスティバルで来日した Extracto Coffee の Chris

もっともコーヒー業界での働き方も画一的ではなく、コーヒーひとすじで日夜腕を磨き全米のバリスタ競技会で上位入賞する人もいれば、並行してアートや写真、クラフト、音楽など別の仕事に取り組んでいる人もいる。青年時代から音楽とコーヒーが大好きだったクリスも、20代の頃はロックバンド Pond でソニー・レコードから音源をリリースし、国内外をツアーしていた。子どもが生まれてからは、家族とより近くにいるために音楽以外の仕事に専念することを選んだ。「ずっとハッピーでいられるのはコーヒーの仕事じゃないか」と、2006年に Extracto Coffee を始めたそうだ。

2つの違う仕事がリンクし、才能が発揮されているケースもある。たとえば Stumptown Coffee Roasters で販売されているマグカップのひとつは、アーティストとしても活動しているバリスタ、ジェス・アッカーマン(Jess Ackerman)がデザインしたもので、店の外のチョークボードも遊び心のある彼女のイラストが彩っている。共同でアパレルブランド ALL BAD DAYS を始めたのも、ポートランドだからこそだと言う(現在は ジェス はブランドから離れている)。

Jess がデザインした Stumptown Coffee のマグ(現在は販売終了)

Jess がデザインした Stumptown Coffee のマグ(現在は販売終了)

「私にとって、やっていることは単に仕事ではないけど、こういう風にできる機会に恵まれています。“職業”のように敬意と規律を持って取り組むようになるまで、アートはずっと趣味でした。アーティストとして成長するための素晴らしい機会がたくさんあるポートランドには、アートと仕事について魔法のような方法があると信じてます。もし、ポートランドのようなリラックスした姿勢のところじゃなかったら、個人のアートからさらに進んで会社を始めようと決意することは決してなかったわ」

また、都市政策としてコンパクトシティ化を進めてきたこの街は、車を使わずに公共の交通機関と自転車だけでも生活圏内を行き来して暮らせる。だから街中やコーヒーショップなどで、友人や知人にばったり会うこともよくある。コンパクトな街で暮らし、仕事をしているので、それぞれの才能を掛け合わせたコラボレーションも起こりやすい。ジェスも「アートにおける私のモチベーションのほとんどは、人々との関係から生まれてる。友達でも知らなかった人とでも」と話す。

食の分野でもシェフ同士のコラボレーションが活発だ。自分たちの店を発展させることのみを考えるのではなく、業界全体やカルチャー自体をお客さんであるコミュニティの人たちと一緒に盛り上げていこうという気概が感じられる。ガイドブック『TRUE PORTLAND』でCoffeehouse Northwest のバリスタに取材した時も、「ポートランドのコーヒーカルチャーは、フレンドリーな競争なんだ」と語っていた。

“誰もが好きなことを仕事にしている”という理想郷のようなことはないし、日本のメディアで取り上げられるようなスモールビジネスのメイカーたちも、そこに至るまでと、今後も健やかに継続していくためにハードワークしている人は多い。一方で、仕事が忙しくなり過ぎないことを好む人もいる。それを自分で選べるというのは大事だ。まず理想を掲げ、そこに向かって手触りを信じながら、それぞれのペースで進んでいく。

ポートランドを訪れたなら、手に取るもの、口にするもの、そこで働く人々の様子、彼らとの対話などをとおして、未来の仕事を考える上での新しいけど懐かしいような何かを感じることができると思う。